◎ Archive: 2012年August

1934 Gibson L-5 Carl Kress

以前ARCHTOP.COMで販売されていたものです。ARCHTOP.COMから写真を拝借しました。

シリアルが#91615ということですので1934年製ですが、この形のペグヘッドは1935年半ばから17インチギターに採用されて行きましたので、カスタム・モデル以前にプロトタイプでもあったのではないかと考えられます。

Carl Kressはギターのチューニングを6弦からBb-F-C-G-B-Dに調弦しています。低音4本はテナーバンジョーのC-G-D-Aの1音下、高音4本はプレクトラム・バンジョーのC-G-B-Dとユニゾンというわけで、バンジョー奏者出身であることが簡単に想像できます。かなりレアな調弦でメリットがあるのか無いのか分かりませんが、現在でもMarty Groszがこのチューニングでプレイしています。

バンジョー奏者出身であったのが理由かどうか分かりませんが、このギターの指板インレイはGibson MastertoneのNo.5(TB-5、RB-5、PB-5)と同じデザイン(ギターのL-12も同じだった)で、ペグヘッドのインレイはMastertoneがラインアップされる前のNo.5バンジョーのペグヘッドインレイと同じになっています。

1923 Gibson L-5

Loyd LoarはGibson社の楽器の近代化に貢献した人物で、ルシアではないがアイデアをたくさん持った製品プロデューサだ。彼の業績の最も有名なものとしてGibson F-5マンドリンがある。バイオリンの構造をマンドリンにアダプトし、カーブドトップ+F穴というレギュレーションを開発した。今日ではLoyd Loar在籍中の1922年から1924年のLoar署名入りF-5モデルは日本円で数千万という高値で取引されている。

当時は、マンドリン音楽が流行し、マンドラ、マンドセロというマンドリン族の楽器もF-5と同じ構造で設計開発され、それぞれH-5、K-5というモデル名が付けられた。特にマンドセロのK-5はギター型のボディを持っており、それを元にして開発されたのが有名な16インチサイズのL-5だ。

L-5は1922年から作られたかもしれないが、現存確認されている最古のものは1923年6月6日製造のシリアル#73718の個体だ。まだ、試作段階にあったのかもしれないが、ペグヘッドの形状や塗装等が後の16インチL-5と異なる。そして、Virzi Tone Adapterという妙な内部音響構造物がLoyd Loar設計の特徴であるが、この楽器にはついていない。

いずれにせよ、歴史的な一台である。(Mandolin Archiveより写真を転載)

1928 Gibson TG-L5

有るのか無いのか謎だったL-5の4弦テナーモデルの写真をネットで見つけたので勝手に転載。

16インチL-5の特徴であるスネークヘッドとフラワーポットインレイが実装されていないが、1928年にカーブドトップテナーギターが存在していたことが驚きだ。